ボールペンと万年筆の使い分けについて3

ペンの使い分けについて3> 

その理由を一言で言えば、万年筆の「使い勝手の悪さ」という点に集約されます。

万年筆はしばらく使わないとインクが乾いて、水洗いをしないと使えないことや、インクの補充時や移動中のなにかの拍子に、あふれ出てきたインクで手や衣服を汚してしまうことがよくあります。

昔のインクは乾きも遅く、実用に使うには能率的ではありませんでした。

特にペン先はデリケートで、強く押しつけて潰さないように注意が必要だし(複写に向かない)、書き手のクセもついてしまいがちです。

このような特徴が、万年筆の敷居を高くしていたのですが、そんな万年筆の短所を克服して、圧倒的に広まったのがボールペンです。

ボールペンのインクは1年以上使わないでいても乾かないし、替え芯の交換時に手を汚すこともありません。
ペン先は一定で書き手を選ばず、強く押しつける複写にも向いています。

この使い勝手の良さのため、ボールペンはあっという間に万年筆を駆逐し、筆記具市場を占めていきました。

最近では、油性インクの欠点を克服したゲルインクが広く普及しつつあり、ボールペンの使い勝手がさらに向上してきています。

これまでの油性インクは粘度が高く、寒い時期などで書き出しが悪かったり、硬い感じの筆記感でなめらかさに欠けるのが弱点でした。
押しつけて書くため、人によっては肩が凝ったり指が痛くなったりしがちなことも問題でした。

粘度の低いゲルではインクの出が良くなめらかに書けるため、特に事務用途において広く受け入れられています。
(ただ高級品にはゲルはあまり採用されていません。油性の特徴である少し筆圧をかけボールを転がす感触でしっかり書く「書き味」が高級品には好まれるようです。)

このように優れた道具であるボールペン市場を占めてしまうのは当然とも言えるでしょう。
それでも万年筆には、ボールペンではどうしても実現できない2つの魅力があります。

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この記事は2009年4月初掲 【ボールペン工房キリタの工房便り】