【クロコ】開発秘話、その7
【クロコ】開発秘話、その7>
この、剥いて巻くのが難しいという問題は、エイ皮でも同じでした。
全体が細かいビーズで覆われたようなエイ皮は、最近特に人気がある超高級皮ですが、非常に加工が難しい素材のようです。
エイの表面のつぶつぶは非常に堅くて、通常牛革を扱っているバッグ屋さんの鋏では、文字通り歯が立たない堅さだそうです。
とりあえず1本だけサンプルは作成したのですが、厚みも厚い部分と薄い部分があって、剥くときに一定しないし、ペンの細い円筒に巻けるくらいの薄さにするのは、かなり苦労したようです。
お財布やバッグを制作するのとは異なり、ペンの細い本体軸に革を巻くためには、相当薄く、そして均一に革を剥かなくてはならないので、そこが一番のネックになります。
エイの革には背中の中央に「目」と言われる斑点が一つあり、バッグなどにする際には、その斑点を正面に持ってきます。その斑点があるか無いかで、エイ革製品としての価値が全く違ってしまうそうです。
しかし超高級なバッグならいざしれず、ボールペンで使うのは、ほんの端切れで足りる面積です。本来なら端切れで足りるものを「目」を求めてペン一本にエイ一匹使うのも何となくはばかられます。
青木さんは通常柔らかいほ乳類皮か、薄い爬虫類皮を専門でやっているので、エイに関しては結局サンプルの1本だけやって貰っただけで、量産は勘弁してくれとの泣きが入ってしまい、こちらも泣く泣く諦めました。
そんなこんなで、なかなか試作ばかりで開発がはかどらないでいたある日、工房の近所に住んでいて日頃からお世話になっている高校の先輩が、合わせたい人がいるから出てこいと呼び出しがかかりました。
先輩の飲み友達の鞄屋さんが、ボールペン屋を探しているとかいないとかで、とりあえず小岩の飲み屋で顔合わせとなりました。
それで知り合ったのが、関西出身なのになぜか墨田で鞄のメーカーをしている日根野さんでした。
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名入れボールペンの【ペン工房キリタ】