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金属挽き物加工(旋盤切削)について

挽き物の挽くとは辞書によると、道具を使って細かく切ったり削ったりすること、とあります。

しかしここではもう少し範囲を狭めて、丸い金属の棒を回転させながら刃物を当てて形を削リ出していく事、という定義を当てたいと思います。

ちょうど野球のバットやこけしを削る時の要領ですね。クルクル回る材料に刃物を当てると、野菜の皮むきのようにピーって繋がってカスを出しながら削れていきます。

この挽き物技術がペンの何処に使われているかというと、先端の口金や頭部の天金、中間部に入っているリングなどの比較的小さな金属部品の製作に使われています。

ペン工房キリタの運営母体である桐平工業は、もともとの出発点としてはこの金属挽き物の会社でした。

完成品まで手がけるようになった現在でも、挽き物の設備と職人を置き、挽き物部品に関しては自社の内製品を使用しています。

ですから今回は、桐平工業での製作工程を紹介しながら、金属挽き物の解説を進めていきたいと思います。


金属挽き物の加工をするための機械の事を旋盤と呼びます。
一般には挽き物という言葉はあまりなじみが無く、旋盤加工と呼ぶ方が通りがいいかもしれませんね。

旋盤と挽き物は、微妙にニュアンスは異なりますが、大きな括りでは同じ意味です。どちらかというと、旋盤は材料を回す機械を表すのに対して、挽き物は加工された製品を指すような感じでしょうか。

旋盤にも色々種類があります。よく陶芸に使われる、粘度を回して器を作るロクロ(轆轤)も、旋盤の一種ですね。

また、回転している棒の外形に刃物を当てて表面を削るだけでなく、軸の正面にドリルを押し当てれば、ドリル自体が回っていなくても、穴を空ける事も出来ます。

黎明期の万年筆の製作では、回転軸の正面に体が来るようにロクロを置き、エボナイトやセルロイドの樹脂の棒を回転させながら外形の切削、穴明けを行い、万年筆を製作する職人が多くいました。

回転軸が上を向いているタイプの旋盤もありますが、より一般的な旋盤では、回転軸は作業者の正面にあって、横を向いています。(ちょっと分かりにくい表現でしょうか。)

ペン工房キリタでは、主軸だけモーターで回して、刃物を取り付けた刃物台を手動で動かす卓上旋盤の他、刃物台や材料の押し込みもカムによって自動で動く自動旋盤、コンピュータ制御で主軸の回転、刃物台と材料の動きを制御するNC旋盤などが使われています。

来週以降、それぞれのタイプの旋盤について説明していきます。


旋盤にはロクロや普通旋盤、ならい旋盤等色々なタイプがありますが、
この稿ではキリタでペンの部品製作に使用している3種類の旋盤(卓上
旋盤、カム式自動旋盤、NC旋盤)について解説していきます。

卓上旋盤(ペンチレース):

文字通り机の上にも置ける小型の旋盤の事ですが、実際にキリタで使用
しているのは、専用の台の上に旋盤が乗っており、足踏みペダルを踏む
ことによって材料の回転をさせたり止めたりするタイプです。

ちょうど昔の足踏みミシンのような感じですね。

卓上旋盤

モーターのスイッチで回転を止めても実際には中々止まらないので、材料の棒材の取り付け取り外しを素早く行うために、ペダルを放すと軸の回転が素早く停止するようになっています。

回転する材料の左右に「かんな台」と呼ばれる刃物台が一つずつと、回転軸の正面には「押しコップ」と呼ばれるドリル台が付いています。

左右のかんな台は繋がっていて、片方のかんな台を材料に近づけるともう片方は材料から遠ざかるようになっています。

かんな台の動きは、レバーを使って手動で動かします。

かんな台には物を取り付け、回転している材料に垂直方向から刃物を近づけ、刃物が材料に食い込むとその部分が削れていきます。

さらにそれぞれのかんな台は材料に対して平行方向に動かせるようになっていて、例えば、材料に刃物を押し当てて溝が掘れた状態から、刃物を材料と平行方向に動かして、その溝を長手方向に広げていくと言うようなこともできます。

卓上旋盤


かんな台と刃物は左右に2つ付いていますから、片方の刃物を使って1工程の加工を施した後、もう一つの刃物を使った2工程目として別の形の加工をする事が出来ます。

長い材料を使っている場合には、1工程目での加工の終わった部分を、2工程目で切り落としたりする事も出来ます。

また、かんな台には角度を付ける事も出来て、刃物を材料に平行移動させる際に斜めに刃物を動かす事も出来ます。

つまり材料を円錐形のように削る事ができる訳です。

押しコップは主にドリルをつける台で、回転している材料の端面に押し当てる事で、ドリル自体が回転しているかのように、材料に穴を空ける事が出来ます。

旋盤の機種によっては、パイプ材にネジを切る事も出来ます。
その為には、材料の回転方向を逆回転できるような仕組みにしておき、押しコップに取り付けたタップがパイプに食い込んだらすかさず逆回転にしてタップを引き抜きます。(或いはタップを回転させる)

このように材料を色々な形に加工できる卓上旋盤ですが、キリタでは大型の自動旋盤で製作した部材の2次加工に主に使われています。

その他、試作などで使う単品の部材を製作したり、具合の悪い部品の手直しをしたりと、非常に汎用性の高い万能品として活躍しています。

卓上旋盤

 


卓上旋盤では、回転している材料に刃物を当てるには、レバーを使って手動で刃物台を動かしました。

これに対して自動旋盤では、機械の力で複数の刃物台を交互に動かして次々と加工品を自動で生産していきます。

形状を削り終わったら、削った部分を材料の長い棒から切り落とし、さらに材料棒を奥から押し出して次の一個を削っていきます。

自動旋盤

最近の大型自動旋盤はNC旋盤と呼ばれ、コンピューター制御で刃物の動きを管理していますが、それ以前は、カムと呼ばれる鉄の板の形状をなぞる事によって刃物を動かしていました。

自動旋盤に丸い鉄の円盤がセットされており、この円盤がぐるっと一周する間に全ての切削を完了し、加工部分を長い材料から切り落とします。

この円盤は正円ではなく、円周はいびつな凸凹になっています。機械にはこの凸凹をなぞる棒がついていて、その棒の動きが刃物台に繋がっていて、刃物を押したり引いたりします。

キリタで使用している自動旋盤には刃物台が5つついています。それぞれの刃物台毎にカムが1つ割り当てられているので、刃物台が5つあればカムも5つあり、全てのカムは同じ速度で回転しています。

5つの刃物台のうち、3つは材料に対して垂直の動きだけで、刃物の押し当てと戻しをしますが、2つは材料に対して平行方向の動きをするようにカムの形も工夫されています。

カム

 


自動旋盤には、カムと呼ばれる円盤が刃物台の数と同数あり、同じスピード回転していて、円盤が一周する間に全ての工程が完了します。

円盤には凸凹があり、刃物に繋がった棒がその凸凹をなぞり、凸の部分で刃物が材料に近づき、凹の部分では刃物は材料に当たらないように引っ込んでいます。

1つの円盤が凹の部分になり刃物が引っ込むと、時を同じくして別の円盤が凸の部分にさしかかり刃物を突き出します。

こうして交代交代で刃物が材料を削ってゆき、円盤が一周する最後の部分で突っ切りと呼ばれる刃物が材料の長い棒から切削した部分を切り落とします。

同時に2つの刃物で切削を行うと互いの振動が影響し合って削りにくいので、原則として1つの刃物が削っている時は他の刃物は待機になります。

ボールペンテル

江戸時代のからくり人形が、歯車の動きで一連の動作を順番にこなしていく仕組みにかなり近いイメージだと思います。

コンピューター制御のない時代に、カムや歯車などの組み合わせだけで複雑な動きを実現している技術力には、本当に感心します。

さらに刃物による材料に横からに切削だけでなく、ドリルを使った正面からの穴空けやネジ切りも、カム一周のサイクルの中で行われます。

 


ドリルを使った正面からの穴明けでは、ペンチレースの時と同じように
回転している材料の端面に押し当てる事で、ドリル自体が回転している
かのように、材料に穴を空ける事が出来ます。

キリタでは、螺旋を描いている通常タイプのドリルではなく、半月錐と
呼ばれる円柱棒を縦に割った形のドリルを使います。

半月

半月の特徴は、段々の付いた形に仕上げる事で、穴に段々を付けられる事で、ペンの先金など先細りの部品の穴に適しています。

次に、自動旋盤によるネジ切りを説明する前に、ネジ切り自体を説明を少ししたいと思います。

金属挽き物では棒を削って部品の形にするため、ネジのギザギザも切削加工によって削り出す必要があります。

例えば木の板にネジ釘を打つ場合、先に下穴を空けておき、ネジ釘を回転させながら押し込んでいきます。

そうすると木の方にもネジの形が刻み込まれますが、それと同じように金属棒にも下穴を空け、タップと呼ばれるネジ釘のような工具をねじ込んで行くとネジを作る事ができます。

雌ネジを切る時にはタップを使いますが、雄ネジを切る時にはダイスと呼ばれる、内側にギザギザの付いた工具を使います。

タップとダイス

実際には、旋盤においては材料の方が回転しているため、タップは回転させずに押し込んでいくだけでねじ込まれていきます。

 


ペンチレースの時に少し説明したように、材料の回転でねじ込まれていったタップを引き抜くには材料を逆回転しなければなりません。

しかし、コンピューター制御のNC旋盤とは異なり、昔ながらの自動旋盤では材料の回転を瞬時に逆にするのはできません。

そこで一定の距離までタップを押し込んでいった時点でスイッチが入り、タップを高速回転させて材料から引き抜きます。

ちょっとややこしいのですが、例えばネジを締める時にはドライバーを向かって右に回し、緩める時には左に回しますよね。

自動旋盤では、いわば材料自体が最初から左に回っているので、タップを材料と同じ程度の速度で左に回しても抜けてきません。

そのため、材料の回転を越える高速回転で材料と同じ左方向にタップを回転させて引き抜きます。

切削をしている間は切削部がかなり熱を出すため、油をじゃんじゃん流して切削部にかけっぱなしにしています。

水をかけると機械が錆びるので燃えないタイプのオイルの一種を使用して、熱を冷ますと同時に金属の切り粉を流すのに使用しています。

旋盤の後ろから差し込まれている材料の長い棒は、1サイクルの加工が終わって削った部分が切り落とされる度に、次に加工される分の長さを前に押し出して使用され、少しずつ短くなっていきます。

材料棒は1本2.5mありますが、それを全て使い切ると自動で次の材料が供給されるようになっています。


ここまで、挽き物加工を行う工作機械として、卓上旋盤と自動旋盤を説明してきました。
ここからは最後に残ったNC旋盤を説明していきます。

と言っても自動旋盤をコンピューター制御にしたのがNC旋盤ですから、説明する事はそれほど多くないかもしれません。

正確にはNCは Numerical Control の略で、数値制御という意味です。

刃物を何ミリ繰り出すか、座標軸のどの位置まで移動するか、と言う切削情報を数値で機械に伝えて動かしていきます。

初期の頃には紙テープ、あるいはパンチカード上に空けられた穴による加工指示情報を機械が読み取って加工が行われていました。

よく古いSF映画で細かい穴の空いた長〜〜い紙テープが機械に入っていく場面などがありますが、実際には僕自身は見た事がありません。(笑)

今ではその数値を機械に伝える役割をコンピューターが担っていますが、NC制御=コンピューター制御と言う事ではないんですね。

最近のNC旋盤では、パソコン上で作ったプログラムを旋盤に受け渡したりもできるようですが、キリタにある古いNC旋盤では、機械の操作パネル上にあるボタンを押してプログラムを打ち込んでいきます。

NC旋盤

オペレーター以外の人が見ると、アルファベットと数字と記号の羅列で訳の分からないように見えますが、基本は、さほど難しくありません。 (あくまでも「基本は」ですが。)

 


自動旋盤では、刃物の出し入れなどは個々のカムの形状に沿って行われ、全てのカムは胴軸上に連携していて、1つのモーターが回していました。

NC旋盤では、それぞれの刃物やドリル毎に1つのモーターを配置して、それぞれをバラバラに動かす事ができます。

ロボットの手足などを動かすのに使われるサーボモーターという種類のモーターは、プログラムからの指示を受けて回転方向、スピードとタイミングを自由自在に動かす事ができます。

NC旋盤でも、このサーボモーターとプログラムの組み合わせで、材料の棒を回転させる主軸から、個々の刃物台、ドリルなどを、こちらの意図する順番で次々と動かして切削していきます。

私の子供が持っている2足歩行ロボットも、関節の数だけサーボモーターがついていて、たしか全部で17個位のサーボを使っていました。

そう考えると、NC旋盤は、いわば一種のロボットですね。動く様子も自動旋盤よりキビキビとメリハリのある動きをする事が出来ます。

 


プログラムの構成は、こんな感じです。(あくまで雰囲気)

[主軸を回転させるコマンド]:スピードを指定する数値;
[刃物台1を動かすコマンド]:座標を示す数値,スピードを指定する数値;
[刃物台1を戻すコマンド]; 
[刃物台2を動かすコマンド]:座標を示す数値,スピードを指定する数値:
             :次の座標を示す数値;
[刃物台2を戻すコマンド];



[製品受け台を動かすコマンド]
[チャックを開いて材料を繰り出すコマンド]

この繰り返しで2.5mの長い材料から、小さな部品を次々に削って行きます。

自動旋盤に比べ、NC旋盤ではサーボモータによって機械の動きの自由度が高く、複雑な形状を作れます。

そのため現在では、挽き物屋さんの旋盤のほとんどがNC旋盤に置き換わりつつあります。

キリタでは、一番古い物で50年位前の自動旋盤もあり、比較的新しいNC旋盤もありで、新旧取り混ぜて目的に合わせて活用しています。

パワータンク

 


ここからは、旋盤による挽き物加工に使う刃物について、説明して行きたいと思います。

挽き物に使われる刃物は、バイトと呼ばれ、一見して鉄でできた四角い棒(四角柱)のような形をしています。

想像してみて欲しいのですが、高速回転する金属の棒に当てて、その金属を削るのですから、カッターや包丁のような薄い刃物では、回転によってはじき飛ばされてしまいます。

ですからバイトでは、四角柱の上部の一辺を削って刃物にして、四角柱自体は旋盤にしっかりと固定して、回転して来る材料に対して少しずつ刃物のエッジを当てて削って行きます。

バイト台

最近では、あらかじめその上部の一辺が刃物に加工されているバイトも売っていますが、以前はその部分は職人が自らグラインダーを使って削り上げ、製作していました。

その削る形によって、色々な用途に使い分けられ、またその出来映え次第で切れ味が違ってくるので、職人はバイトを作れるようになって始めて一人前と言われていました。

 


バイトの種類には実に様々な物があり、細かく説明していくと本当にきりがないくらいです。

私自身、旋盤についてはスペシャリストではないので、この稿ではごく大ざっぱにバイトの種類を説明していきます。

四角柱のバイトの先端は、用途によって様々な形状に作られています。

材料の外側を削る用途では、西洋の剣のように先端を三角にした真剣バイト、それを斜めに配した斜剣バイト、先端を尖らせず平たくした平バイトなど、仕上げる形によって刃の形を変えます。

NC旋盤で雄ネジを切る行程で使われるバイトでは、切るネジの谷の形に合わせてバイトの先端も、とがった三角形の先端の形にします。

内径加工用の中ぐりバイトでは、材料の内側をえぐるために、鍵のように曲がったバイトの先端に刃を付けています。

突っ切りバイトと呼ばれる最後に材料を切り落とすためのバイトでは、平バイトの幅を凄く狭くした形状にして、削り落とす材料の無駄を省き、抵抗も少なくしています。

ジェットストリームボールペン

 


バイトを素材から分類すると、四角柱の先端をそのまま削って使う完成バイト、先端により硬い金属をろう付けしてあるろう付けバイト、先端の超硬金属を交換式にしたスローアウェイバイトなどになります。

完成バイトは主にハイスと呼ばれる、コバルト、バナジウム、モリブデンなどの希土類金属を添加した鋼を、高周波加熱で熱処理したものです。

ただの四角柱や丸棒の状態で売られていて、グラインダーを使って先端を削り、目的に適した形状にして使用します。職人技が試されますね。

完成バイト

ろう付けバイトは、バイトの先端にハイスよりもさらに硬い超硬合金をろう付けではめ込んだバイトです。

硬いため完成バイトほど自分で自由に形は作れないし、研ぐのも大変ですが、高い温度まで刃先強度が落ちないので持ちがよく、作業効率が格段に向上します。

超硬合金は炭化タングステン、コバルト、炭化チタンなどの微粉末を焼結したものだそうです。

ろう付け(鑞付け)とは、よく貴金属の装飾品などに使われる溶接の一種ですね。融点の低い鑞を溶かして接着剤として用いる方法です。

ろう付けバイト

スローアウェイバイトとは、先端の超硬チップを交換式にしたバイトで、価格も安く、自分で刃先を作り込む必要がないため、気軽に使われます。

キリタの職人はハイスでも超硬でもグラインダーで自作してしまいますので、チップは使いませんが、最近ではこちらの方が主流になってきています。

スローアウェイバイト

 


旋盤の機械の中で材料をしっかりと固定して、さらに回転させるための部品がチャックです。

固定して回転させるというと変に聞こえるかもしれませんが、日曜大工のドリルの機械にドリルそのものを固定し、そして回転させることを思いおこすと分かり易いと思います。

そのドリル機の先端にあって、真ん中にドリルを通す穴があり、穴の内側に突き出た3つの突起がだんだん狭まってきてドリルを締めつけて固定する部品がチャックです。

旋盤で材料を回転させるというのは、このチャックを回転させることで実現しています。

チャックには3つないし4つの「突起」で締めるタイプの物と、棒材の丸い形に合わせた「面」で締めるタイプの物があります。

「突起」で締めるタイプでは、ある程度の範囲内なら、材料の太さが変わっても締めることができます。

チャック

汎用性があり便利なのですが、真鍮のような柔らかい材料では、当たる部分に傷が付いたり凹んだりしてしまいます。

 


「面」で締めるタイプの物をコレットチャックと言い、自動旋盤やNC旋盤で通常使われるのは、このタイプのチャックになります。

シャーボX

材料の丸みに合わせた形の「面」で締めるので、よりしっかりと締めることができ、なおかつ材料に傷が付きにくい特徴があります。

シャープペンの芯を締めているのもチャックで、芯が折れないように円柱の表面を包んで締めるコレット式になっていますよね。

チャックに丸い穴が空いていて、先端の方で穴が3つに割れており、咲きかけの花びらのように僅かに開いて穴が広がっています。

その穴に材料の棒を通し、開いた花びらを閉じるようにチャックの穴を狭め、材料を締めて固定します。

通常は丸い穴が3分割されていますが、材料の形状に合わせた特注品で4つに割れた物や、四角い穴の物なども使われることがあります。

8角の材料用に、4つに割れたチャックで、それぞれの内面が途中で角度の変わる直線で、合計で8面を押さえられるようなチャックを作ったこともあります。

チャック

 


ただし、材料の棒材の太さが変わると穴の大きさも変わるため、使う材料の太さ毎にコレットチャックを揃え、材料の太さが変わる度にチャックもそれに合わせて交換しなければなりません。

材料屋さんが用意する棒材は、特注品以外は、大抵は直径で5mm位ずつ太くなります。

例えば、直径6mmの材料を使うときには6mm用のコレットチャックを使い、7.5mmの材料には7.5mm用のコレットチャックを使います。

仮に直径5mmから10mmの材料を扱える旋盤の場合、チャックは、5mm用、5.5mm用、6mm用・・と全て揃えると11個のチャックが必要となります。

自動旋盤、NC旋盤のチャックはそこそこの価格になりますので、機械の台数毎に1セットのチャックはなかなか揃えられませんし、またその必要もありません。

よく使う材料径に合わせたチャックは多めに用意し、あまり使わないチャックは複数の機械で使い回します。

でも時として、例えば製作する部品的には6.5mmの材料でいいのだけれど、それに合うチャックが他の旋盤で使用中で足りないため、しかたなく7mmの材料を使ったなんて事も起こったります。(涙)

1つの部品を削り終わり、突っ切りバイトで長い材料から切り落とした後、材料を締めているチャックを開き、材料のまだ削っていない部分をチャックの前に送り出さなければなりません。

日曜大工で使うドリルは、チャックをギュッと締めたら工作が終わるまで緩めることはありませんが、部品をどんどん量産していく挽き物加工では、旋盤のチャックを頻繁に開け閉めする必要があります。

このチャックの開け閉めを簡単に素早く行うための部品がクラッチで、筒状になっているチャックの外側に通したリング形状になっています。

チャックの外側には傾斜の付いている部分があり、この傾斜をクラッチリングが通ることによってチャックの花びらが開いたり閉じたりします。

シャープペンの芯を咥えるチャックも、同じようなクラッチで開け閉めしています。

旋盤加工では、チャックはかなりの高速回転をしていますが、瞬間的にクラッチを動かすことで、時間のロス無くチャックの開け閉めを実現しています。


ここまで旋盤による挽き物加工について説明してきましたが、最後にもう一度全体の流れを描写して、この稿を終了したいと思います。

カム式自動旋盤とNC旋盤がありますが、とりあえずここでは先ずカム式を使って、ペンの先金を切削する仮定で実況します。

NC旋盤での切削の違いなどは後述します。

先ず、チャックが開いて材料の棒が旋盤の後ろから挿入されます。
チャックから飛び出た部分の材料を刃物で削るので、製品の長さ+数ミリ分の材料がチャックから出た位置で材料の前進を止め、チャックが締まります。

チャックは高速回転しているので、チャックが締まると材料も高速回転を始めます。

ここからバイト@〜D、錐@〜B(タップ/ダイスを含む)を使って切削していく訳ですが、どの順番でこの8つのツールを使っていくかは、旋盤のセッティングをする職人が自らのセンスで決めていきます。

旋盤

大体のセオリーとしては、側面を削る前のまだ材料が太くて安定している状態で錐で穴を空け、その後バイト@〜Cを使って側面を削って形を作り、最後にバイトDの突っ切りバイトで切り落とします。

 


3つ取り付けられる錐の内、1つはメインの穴空け錐、1つは先端の細い穴用で、最後の1つにはタップが取り付けてあり、順番に材料棒の正面(端面)に入ったり出たりして加工していきます。

タップはネジ切りが必要な場合にのみ使われ、前述したように、一定の深さでタップが高速回転を開始し、逆回転をしながら引き戻されます。

穴の深さは、最後に材料を切り落とす位置よりも深く掘った場合には貫通穴となり、そこまで深く掘らないと非貫通穴になります。

切削作業時には貫通させてもさせなくても良いのですが、出来上がった製品の機能上貫通させてもかまわない場合は、なるべく貫通穴にします。

貫通穴

それは切削の後工程で、洗浄液やメッキ液に浸すときに、穴が貫通していないと液が流れず、穴に液や切り粉が残ってしまうのを防ぐためです。

そして次に、カムにより刃物台が前進し、バイト@、Aくらいを使って製品の大まかな形を削って行き、さらに必要に応じてバイトBとCを使って表面を細かく削り形を整えます。

最後に突っ切りバイトの付いた刃物Dが突き出てきて、削り上がった製品を材料棒から切り離します。

これらの動きの全てを、コンピューターを使うことなく、それぞれのカム円盤の凸凹をなぞることで機械的に実現しています。

最後の最後に、NC旋盤の自動旋盤との違い・特徴を説明して、この挽き物の連載を終了します。

 


最後にNC旋盤の自動旋盤との違いを説明して、この連載を終了します。

カム式自動旋盤の場合は、メインの軸が一回転する1サイクルの間に、全ての行程を終わらせるため時間に制約があり、あまり多くの行程や刃物を投入することができませんでした。

その点NC旋盤では1サイクルの時間を数値で設定できるため、時間的制限がなく、サーボモーターを使った刃物の自由自在な動きで、複雑な形状も時間をかけて削って行くことができます。

そのため使う刃物の数も自動盤より多く設置することも可能で、ドリルやフライスなどの刃物ツールの方を回転させる事もできます。

常に材料を回転させる自動旋盤だと左右対称の物しか削ることができないのですが、NCでは一旦主軸の回転を止めて、ドリルやフライスで横穴を空けたり側面だけを削ったりする事もできます。

またNCの、刃物の動きと主軸の回転を自在に制御することによって可能になった削り方の1つにチェーシングがあります。

これは先述したタップ・ダイスを使わないネジの切り方で、材料に刃物を当てた状態から、刃物を横に引く速度と、主軸の速度を合わせることによってネジを切る方法です。

このようにNC旋盤では、従来の自動旋盤ではできなかったかなり複雑な形状の部品を、2次加工を行うことなく製作できます。

複雑な形状も削れて24時間運転にも対応するNC旋盤は、今では完全に自動旋盤から置き換わり、挽き物業者のメインの旋盤となっています。
(キリタでは今でも自動旋盤も動いていますが。)

(おしまい)



 

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