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なぜこのような形を取らせていただいたのかは、順を追って説明させていただきますが、その前に、僕が日頃ペン工房を経営していて感じているあるジレンマについて話をさせてください。
ネットショップを開業してからはまだわずかな年月しかたっておりませんが、弊社が高級筆記具の製造を始めて既に数十年がたっております。
ポツポツ届くユーザーの方からの修理以来品の中には、どう見ても5年以上、いや時には10年以上使い続けたであろう製品もよく見かけます。
それらの中には、角張った部分など一部分的なものですが、メッキや塗装が剥げ落ちるまで使い込んでいただいた製品をもあります。
そこまで使い込まれて、さらに修理して使い続けようとするほど気に入ってもらえている。涙が出るほど嬉しいです。
しかしその反面、やはり長年使い込んで角のメッキがおちたペンを見るのは残念な気持ちになります。
しかし長年ペンを日常的に使うと言うことは、動作としては表面を擦り続けるようなものですので、弊社製品に限らず、どうしても退色は避けられません。
たしかに下地が出るまで使い込んだ1本は、味わいも出ますし愛着も湧き、なかなか良いものですが。
僕としては、キリタのペンを多くの人にどんどん使ってほしい。しかし使い込んでいけばどうしても表面は痛んでくる。この「こちらを立てればあちらが立たず」みたいなジレンマが、ずっと僕の中にたまっていたのです。
プラスチックの成型上がりであれば、表面の色だけが落ちることは無いのでしょう。外国製の万年筆などはこのケースですね。
しかしキリタのペンの特徴は重量感のある金属製。どうしても表面処理は必要です。
そこで表面にメッキや塗装をしない無垢材のままの製品なら、このジレンマを解決できると考えて製品を開発しました。
素材については、真鍮無垢も考えましたが、第一弾としては銀を採用しました。
実は以前にも、いくつかのメーカー向けに銀無垢ペンを製造したことがあるのです。
あるメーカー向けに作ったときは、本体軸のみが銀製で先金や中間リングなどは真鍮製の銀メッキ品でした。
なんだか中途半端だし、長年使い続けて(擦り続けて)、リングの部分だけ真鍮色が出てきたりしたら悲しいですよね。
又別のメーカー向けに作ったときは、わざわざ銀無垢の上からロジウムメッキを掛けた製品でした。
これは銀の変色防止のためなのですが、これでは銀独特の素材感がわからず、表面上は真鍮にメッキを掛けたものと全く変わりません。
「せっかくの銀なのに、なんだかもったいない」と思っていましたが、下請け仕事の悲しさ、顧客の指示通りに製造するしかありません。
だからいつか自分の作りたい銀製品を世に出したいと思っていたのです。
今回は本体のみでなく、先金などの部品も含めてほぼすべて銀無垢製品です。
表面はバフ研磨のみで仕上げてあります。他の銀色メッキに比べて、銀の色は少し白っぽく、柔らかい感じがします。個人的にもとても好きな風合いなんです。
ただクリップだけは、バネ性の問題があるため従来の鉄製銀メッキ品となります。
本体軸ほど日々こする部分ではないので、剥げの心配も少ないと判断しました。
ところで、銀材というものは、空気にさらされていると酸化して黒ずんできます。
特に使わずに机に放置しておくといつの間にか黒っぽくなっている。
たまに銀用磨き布などで拭き上げると良いのですが、それよりもっと良いのは日常的に使うこと。
塗装やメッキ品で悩みの種だった、毎日使うことによって毎日擦り続けると言う行為が、銀無垢の場合は黒ずみを予防する行為になるのです。
もちろん銀製品ですから貴金属としての価値もあります。
使用している銀材は、上野の(株)大淵銀器から購入した純銀シルバー925、
1本につき銀15.8gを使用しています。
また、本体表面にはエンジンタン彫刻で柄が入っていますが、ここにもこだわりました。
従来よく使っていたタテ筋彫刻はシャープでとてもかっこいいのですが、握ったときに下へ押しつけ気味に書くとちょっと滑りやすい傾向がありました。
そこで、シャープでかっこいいタテ筋ではなく、アミ目柄と、チェック柄の2パターンの彫刻を用意し、銀製品ではあるけどあえて実用性を追求しました。
両柄とも指に引っかかる感触でしっかり握れます。
また、弊社従来品のKWシリーズではデザイン重視で、後軸を太くボリュームを持たせてかっこよく仕上げてあります。
それに対し今回のシルバー925では後軸を太くせず、すっきりした仕上がりにしています。
それにより 重量バランスが改善され、取り回しが良くなっています。
素材、彫刻による柄、デザインと、いずれもヘビーユーザーのための機能を追求した製品ができあがりました。
<こんな方におすすめします!>
●本当に価値のある逸品を、日常の中で使用したい方
●メッキ落ちを気にせず長年バリバリ使いたい方
●銀独特の白い輝きが好きな方
ただし黒ずみの問題がありますので、、集めるのがお好きで、実際には使用しない方には向きません。
(使わなくても手入れが好き。磨き上げる時間が好き、と言う方はOKです。(笑))
もちろんキリタ製品ですからクーリングオフ1ヶ月。理由の如何に関わらず返金保証いたします。使ってみて自分の好みでなかったと言う理由でも、返品OKです。
そして機能面は無期限保証。部品と会社が残っている限り、無償にて修理いたします。
ただし、銀という特別な素材を扱うため、数量に限りがございます。
銀材は先に現金で購入しなければなりません。貴金属の売買では手形などの後払いでは購入できないからです。相応の金額になりますし、在庫を抱えてしまったら僕の責任問題です。(笑)
ですから初回生産は数量を抑えての限定生産、アミ目柄と格子柄、各100本のみの限定品となります。
ただ本体のプレスを頼むときには困りました。通常はプレス行程は万単位の数量なのです。
なんとかプレス業者さんに事情を説明して頼み込み、特別に少量でプレスを打ってもらいました。
小物の部品は自社内の切削です。こちらも数量が少ないと「機械のセット時間の方が、切削時間より長いじゃないか。」と言われましたが、何とかなだめてやってもらいました。
とにかく何とか発売までこぎ着けました。
お気に召しましたなら、幸いでございます。
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