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ベークライトの利昌工業

そのベークライト丸棒の仕入れ先であり、連載中にも登場した利昌工業
さんについて、今週からすこし書いてみたいと思います。

と言うのもこの利昌さん、なんと創業が1921年。元号で言うと大正10年
で、2013年現在で創業92年の古〜い会社。

非上場の同族経営でありながら、現代でも先端の技術を持ち、日本と
世界のハイテク巨大企業に製品を納める凄い会社なんです。

生産している物は、創業当時から一貫してベークライトから発展した
耐熱絶縁材料。現在はその特性からプリント基板が中心のようです。
その一貫性も凄いですよね。

キリタで使っているベークライト材も、本来筆記具用の材料ではなく、
ソケットのような耐熱絶縁性が必要な製品を作るための材料なのです。

聞いた話では、床屋さんは柘植の櫛を使っているけど、パーマ屋さんは
ベークの櫛を使っているそうです。面白いですね。

東京金属千葉工場

現在日本でベークライトを製造しているのは、この利昌工業さんともう
1社住友ベークライトさんだけです。

ベークライトという言葉は、開発者であるベークライト博士の名前から
呼ばれた商品名で、より一般的にはフェノール樹脂が一般名になります。

(今週以降、商標の関係でベークライトをフェノール樹脂と呼びます。)

フェノール樹脂は明治時代の最末期に開発され、大正時代に広まった
プラスチックの草分け的な物質です。

当時は、石炭などを燃やした時に出る蒸気を冷却して取り出したフェ
ノールという物質にホルマリンを加えて製造していたそうです。
(今は石炭は使用していません。)

それまで人々の身の回りの道具は、木や石を削るか、土や鉄を焼き固め
るしかなかったわけですから、プラスチックができてから色々な面で
生活も変わったのでしょうね。

その後色々な種類のプラスチックが開発され、身の回りの道具の素材と
しては使われなくなったフェノール樹脂も、その耐熱絶縁性を活かした
分野でしっかりと生き残ってきました。

そしてそこには利昌工業の絶え間ない新製品開発の努力があったのです。

スライドクリップ

利昌工業の一番の名物は、なんと言っても現CEOの利倉晄一氏です。

氏は1929年(昭和4年)生まれで、2013年現在で84歳。現役CEOです。

創業者の利倉駒二郎氏の跡を継いで代表取締役に就任したのが1961年
(昭和36年)。それ以来50年以上にわたってトップに君臨し続けています。

こうして書くと、旧態依然の古〜い体質の会社のようですが、実際に
利昌さんのホームページを見ると、常に新しい事に取り込んできた会社
というイメージがあります。

例えば沿革のページを見ると、最近ようやく世間に認知されてきた
「企業理念」が1963年には既に制定されていますし、工場のISO認定
も早い。

着実に新製品を出して、その都度工場を増やしていって、だんだん大き
くなってきた様子が読み取れます。

ホームページには利倉CEOの語録「一隅の経営」の一部が掲載されて
いますが、経営に打ち込む真摯な姿勢、進取の気運、バランス感覚が
優れた素晴らしい語録です。

東金千葉工場

先日、利昌工業の広報担当で以前この稿にも登場した吉岡さんが、
工房へ2度目の訪問をして下さいました。

数年前にも一度取材していただきましたが、今回私がフェノール樹脂
(ベークライト)と利昌工業さんについて連載していた事もあり、再び
数千部発行している広報誌の10月号に載せていただける事になりました。

今回吉岡さんは、万年筆の製作現場に入り、職人の加川がベークを切削
する所もバッチリ写真に納めていきました。

利昌さんには、キリタのベークライトボールペンを色々な折りに記念品
として使っていただいています。

利昌製品のほとんどは目に見えない部分の工業部品なので、フェノール
をボディに使ったペンは、トップ営業の際や、海外のお客様との商談時
などにちょうど良いお土産になるとの事。

私自身は利倉CEOにお会いした事はありませんが、いつか機会があれば
嬉しいですね。(でも大阪だからな〜。)

今回で、利昌工業さんについての連載も終了。
来週からは新ネタをはじめます。(実はこれから考えます。)(^^;)

理想工業HP http://www.risho.co.jp/index.html

 


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