東京金属工業(株)〔以下東金〕は、ペンクリップの専門会社として日本一、のシェアを持つ、日本の誇るモノ作り企業です。
創業は昭和26年、当時、婿養子として入った町のプレス屋さんで修行をしていた小菅庄七氏(現会長)が、プレスでペンのクリップを製作することを思い立ち、実家である藤原家のお兄さんと弟を誘って会社を興しました。
当時は戦後の復興期、始めてアメリカからボールペンが入ってきて数年が経った頃で、日本でもボールペンが作られ始めた所でした。
戦前からある万年筆やシャープペンの工場も再稼働を果たし、徐々に復興していく日本経済と共に、多くの筆記具メーカーからの注文が来るようになり、東金製のペンクリップは順調に生産数を伸ばしていきました。
東金の強みは、開発・設計・型作り・プレスによる生産から焼き入れまでを全て自社内で行っているところにあります。
通常の工業製品では、それぞれの部署を別々の会社が行うことが多いのですが、この一貫体制とそれによって蓄積されていった技術力・ノウハウが、多くの(と言うか日本にある全ての)ペンメーカーの信頼に繋がっています。
個人的には、特に型作りのノウハウと技術力が、その中でもキモになっているのではないかと思います。
型については、先に説明した単純な単発型から、複合型である順送型へ発展していきましたが、東金の設計する順送型はアイデアと精緻に富んだもので、その技術力が反映されています。
プレスクリップの技術を応用した派生製品なども、東京金属ではその時々に作ってきました。
中でも1994年に発売した書類ばさみの「スライドクリップ」は、取扱が容易でしっかり止まり、しかもはみ出ないということで大ヒット商品となりました。
そこで、それを販売するための別会社もおこし、ホワイトボードに貼れる磁石付き製品や、金属アレルギーの人にも安心で、冷凍庫に入れても冷たくなりすぎずに使いやすいオールプラスチック製のスライドクリップなど次々と開発しています。
また一時期、本体と一体成型のプラスチックのクリップが増えてプレスクリップの需要が減ったのですが、ゼブラからの依頼で開発したバインダークリップの登場で、多くのプラスチックボールペンにも東金の板バネが使われるようになりました。
バインダークリップとは、本体とプラクリップの継ぎ目に小さな板バネを使って、洗濯ばさみのように大きな開閉と軽快な動きを実現したクリップです。
バインダークリップの板バネは、クリップそのものに比べれば価格は微々たるモノですが、なにしろ事務用のプラペンの出荷数は莫大なので、そこに一枚かめることは大きな意味があります。
東京葛飾の本社工場では、型の設計・製作と、単発式のプレス機による生産が行われていて、千葉県白井の工業団地にある千葉工場で順送型による量産品の生産と焼き入れ作業をしています。
焼き入れの設備は、クリップ以外の他の雑多な小物にも使用できるため、別会社として独立させ、筆記具業界や、その他の色々な業界の製品の焼き入れも請け負って行っています。
先に紹介したスライドクリップの販売会社と併せて2社の関連会社となっていますが、これは実績のある従業員への「独立への道の提供」という意義も持っています。
兄弟3人で始めた東金ですが、現在では長男の藤原さんのご子息が社長、三男の藤原さんのご子息が常務と、見事に世代交代がなされ、トロイカ体制がそのまま引き継がれています。
国内では圧倒的なシェアを持っていますので、この校をお読みの皆さんが持っているペンのクリップは、かなりの確率で東金製品なのです。
ペンクリップの種類
プレスクリップの製造工程
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